[76] リレー小説本編スレ9 [ 返信 ]
Name:鈴木ニコ Date:2012/05/03(木) 11:38 
リレー小説本編を書き進めていくスレです。
文章の解釈に迷ったり今後の展開などで言いたいことがありましたら設定用掲示板のリレー小説議論スレへどうぞ。
設定用掲示板:http://www3.atpaint.jp/mysyn/index.htm

F5キーバシバシ(`・ω・´)つ

[77] RE:リレー小説本編スレ9
Name:日夏ゆうり Date:2012/05/11(金) 00:20
 気持ち良く晴れ渡った空。歩くには絶好の天気だ。
 エシュまではまだ距離がある。今日中には辿り着かないだろうが、間に小規模なポケモンセンターがあることを巡は地図で確認していた。今日の目的地はそこにしよう。
 地図から顔を上げると、要は相変わらずメイリオの後方に乗りながら、司にちょっかいを出している。その度に顔を赤らめる司を、巡はぼんやりと眺めた。あんな顔もするんだな――。
「おい、何ボーッと突っ立ってンだよ。置いてくぞ」
「……え? あっ、はい」
 橘平が怪訝そうな顔で巡の肩を小突いた。どうやらぼんやり眺めていただけでなく、実際にボーッと突っ立っていたらしい。
 何だかとてつもなく恥ずかしくなって目を泳がすと、優しく微笑むユメトと目が合った。訳も分からず軽く会釈する。
「巡くん、今日はどこを目指すのかな?」
「あっ……」
 そうだ、地図係としての本業を忘れていた。
「此処からエシュまでの間にポケモンセンターがあります。今日はそこに泊まりましょう」
 やっと本筋に戻ってきた。

◆ ◆ ◆

 ポケモンセンターに着いたのは思ったよりも早く、日が暮れ始める頃だった。良い天気の下歩いて汗を掻いたことだし、風呂に入ってから夕食を摂ろうということで皆一致して、男女それぞれ部屋に分かれた。
 今日泊まるポケモンセンターは、その規模な割には立派な大浴場を備えているようである。
「しばらくシャワーで済ませていたし、折角だからお風呂に入りたいな」
 荷物を整理しながらユメトが言う。ユメトが取り出すお風呂セットは何度見てもやはり可愛らしい。
「そうですね……大浴場に行ってみましょうか」
 ちらりと橘平の方に目をやると、相変わらず不機嫌そうな顔をしている。目が合ったが逸らされた。
「橘平くん、いいかな?」
「……勝手にしろよ」
 ユメトの問い掛けに、橘平は荷物をまとめてそそくさと部屋を出て行ってしまった。巡はユメトと顔を見合わせては苦笑いし、二人で先に行く橘平の背を追った。

 思えば、全員で同じ風呂に入るのは初めてである。大浴場は売り文句に違わず立派だった。
 しかしその規模よりも、普段ふわふわしているユメトが可愛らしいお風呂セットを片手に隠していないことよりも(寧ろ自然過ぎて気付くまで何の違和感も無かった)、巡の目に付いて離れないものがあった。
 橘平の右肩から左脇腹に掛けて走る大きな傷跡。目を逸らそうとしても、気になってしまって逸らせない。
「……見ンなよ」
「……! あ、すいません……」
 いつの間にか、そんな巡の視線をうざったく振り払うような目で、橘平がこちらを向いていた。ただでさえ悪い目つきをますます尖らせているその表情が直視できず(いや、普段から出来ていないが)、つい目を泳がせる。
 そしてこうも焦っているときほど、間を持とうとするのか、聞かなくていいことまでつい口をついて出てしまうのだ。
「その傷……どうしたんですか」
 橘平がぴくりと動く。一拍の沈黙。橘平は口元をわずかに歪めて、ぽつりと呟いた。
「……ガキの頃、ちょっとな」

 橘平の表情はいつも通り不機嫌そうだったが、面影がどこか寂しげだったのを、巡は見逃さなかった。かと言って、掛けてやれる上手い言葉も見つけられない。
 橘平は思い切り顔を洗い始めた。水飛沫がこちらまで飛んでくる。
 ふと後方に目をやると、湯船にユメトの姿が見えた。巡はつい、逃げるようにその場から立ち去って、湯船に浸かった。

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お風呂!!
師匠かわいいね…

[78] RE:リレー小説本編スレ9
Name:ミンズ Date:2012/05/12(土) 07:45
「司さんとお風呂♪司さんとお風呂♪」
浴場に向けて歩きながら、司は戦々恐々としていた。メイリオに乗っているときだけでも何度セクハラを受けたことか。一緒に入浴などすれば何をされるかわかったものではない。
隣を歩く要は鼻歌混じりで、今更別々に入ろうとも言い出しにくい。
「司さん、私大浴場とか初めてなんだ。マナーがあったら教えてね」
「うん…」
大浴場なので一応人目はあるだろう。要が自重してくれることを願うばかりだ。
「湯船に漬かる前に体を洗うんだよ」
「うん、わかった!」
こうやって会話をしていると普通の子に見えるのに。この子はどうしようもないセクハラ魔なのだ。
脱衣場について、服を脱ぐ。脱ぎ終えて要の方を見ると、既に裸になった要が司の体をじっと見ていた。
「なっ…」
司は思わず赤面する。要はにやにやしながら言った。
「司さんの裸!ZENRA!浴場で欲情する、なんちゃって♪」
オヤジかこの子は。しかし要が浮かれているのは伝わってきた。大浴場が初めてなので浮き浮きしているのだろう。
「入るよ」
「うん!」
浴場の扉を開けて、司は絶望した。誰一人居ない。
こんな場所にあるポケモンセンターで、しかも入浴には少し早い時間帯だ。人が居ないことくらい想定しておくべきだった。
恐る恐る後ろの要を見ると、要は目を輝かせていた。
「凄いね、司さん!貸切だよ!」
「ああ、そうだね…」
今からでも引き返したい。切実にそう思った。
要はタオルに石鹸をつけて、体を洗い始めた。今のところ、手を出してくる気配は無い。
司も手で石鹸を泡立てて、左腕に滑らせた。
「司さん、タオル使わないの?」
「うん、こうやって手で洗うんだ」
要は珍しそうに司が体を洗う様子を見ている。
「司さん、背中流そうか?」
要が言ってきた。司は逡巡する。この子に体に触らせて大丈夫だろうか。油断すると胸を触ってきたりとか…
司の返事が無いので、要は手で石鹸を泡立てて司の背中に滑らせた。
「ひゃあ!」
いきなりのことにびっくりして声を上げてしまう。要がまたにやにやした。物凄く嬉しそうな顔だ。
「もしかして司さん、背中も弱いの?」
「違うよ。ちょっとびっくりしただけだ」
要はつまらなそうな顔になった。
「ふうん…でも司さんの背中!司さんの背中!ふふふん♪」
要は司の背中を丁寧にこすって、手を離した。
「おわり!」
「ありがとう」
何も変なことはされなかった。良かった。考えすぎか。
要はいつの間にか体を洗い終えていたようで、シャワーを頭からかぶって髪を洗い始めた。わっしゃわっしゃと豪快に手を動かしている。
「要、その洗い方じゃ髪が痛むよ。ちょっといいかな」
要の手を下ろさせて髪を洗ってやる。要は戸惑ったような顔をした。
「こういう風に手を動かせば地肌から綺麗に汚れが落ちるよ」
「う、うん…」
要は上の空といった様子で返事をして、どことなくもじもじし始めた。急にどうしたのだろう。
「も、もういいよ。後は自分で洗う」
要はそう言うと、大人しく自分で髪を洗い始めた。司も髪を洗い始める。
要は髪を洗い終えて、湯船にどぼんと浸かった。
「広いね!司さん!」
また元気になっている。おかしな子だ。
「泳ぐよ!」
すいすいと見事な平泳ぎで湯船の中を泳ぎ始める。
「人が居るときは泳いだら駄目だよ」
「うん、わかってる!でも今はいいよね、司さんも泳ごう!」
「いや、僕はやめておくよ…」
恥ずかしいとかそういうのを無視しても自分には物理的に不可能だ。
「えー、折角広いのに」
要はまた泳ぎ始めた。
思いの他普通に入浴できている。セクハラするには絶好のチャンスだろうに、よくわからない子だ。
司はそう思いながら、要への警戒を少しだけ解いたのだった。

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かなめと俺の自制心が仕事してくれて助かった

[79] RE:リレー小説本編スレ9
Name:鈴木ニコ Date:2012/05/16(水) 14:31
「あれ。いいものを飲んでいるね」
入浴を済ませた女子二人が待ち合わせのロビーへ向かうと、男子三人は瓶詰めの牛乳を飲んでいた。このポケモンセンターはミルタンクを飼育しているらしい。栄養つけなきゃと思ってね、ユメトが飲んでいるのはフルーツ味だ。腰に手を当てた橘平が飲み干したのは、まさかイチゴ味だろうか。
僕たちもいただこうか。隣に声を掛けると、要は既に白い瓶をふたつ持ってきていた。
「司さん!モーモーミルクをごっくんしてください、って言って!」
な、なにそれ……

夕食は、その牛乳を使ったクリームシチューだった。橘平が微妙な表情で皿を見つめている。苦手なピーマンは入っていないはずだ。
「育ち盛りなんだから。好き嫌いばかりしていると、大きくなれないぞ」
「ち、違ぇよ!! お、お前こそ、」
ん?どういう意味だよ? 夕食の後。橘平と司は牛乳をもう1本買った。


「このまま順調に進めば、明後日の朝にはエシュタウンに着きますよ」
男子部屋でのミーティングは、すっかり恒例になっていた。牛乳をこくこくと飲みながら、司はこくこくと相槌を打つ。今度はイチゴ味にした。
橘平は窓枠に腰掛けて外を見ている。会議に参加する様子はない。エシュタウンで儀式をするのは彼だというのに。司はなにか言ってやろうと口を開いたが、ユメトと巡(お前もか、珍しい)に止められた。そうだな。彼なりに、緊張しているのかも。

「要ちゃん。怪我の具合はどう?」
ユメトは、司の口元をうっとりと見つめている要に話し掛けた。橘平が振り返る。
「う、うん…良くなった、と思う」
なぜか残念そうだ。いや、理由は察するが。元々ひどい傷ではなかった。司には手当てをしてもらっているし、先ほど浴場で元気に平泳ぎを披露したところだ。仮病を使っても見破られてしまうだろう。ユメトたちにも、心配を掛けてしまっているようだし。
要の名残惜しげな視線に気付いたのか、はたまた自分を慕ってくれる(過剰に)彼女に甘いだけなのか。司は親切な笑顔を浮かべて、
「よかった。でも、大事をとって、エシュまではメイリオで移動しよう」
「やったー!司さん、ありがとう!」
大袈裟に喜んだ。元気じゃないか。橘平は窓の外へ視線を戻した。

「…………ん?」
橘平の小さな疑問符に、ユメトと巡が反応する。巡は、風呂での出来事を気にしていた。
「橘平さん。外になにかあるのですか?」
巡の質問には答えず、夜の森に神経を集中させる。何者かの視線を感じたのだが、目を見つけることはできなかった。白いインカムも見当たらない。
「…………なんでもねえ。今日はもう寝ようぜ」
集中を解くと、今度は室内の視線が気になって。橘平は立ち上がると、自分のベッドに寝転んだ。
そうだね、今日はお開きにしよっか。司と要の退室音とおやすみなさいを背中越しに聞きながら。橘平は、同室の二人が寝静まるのを待った。


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なんだろう、牛乳回???
謎の視線はストーム団でもいいし、再登場早すぎるから違うと思うけれどCCDでもいいし、困ったときの野生ポケモンでもいいし、きっぺちゃんの勘違いでもいいです。強引だったかしら?(´・ω・`)

[80] RE:リレー小説本編スレ9
Name:日夏ゆうり Date:2012/05/20(日) 03:51
 二つの寝息が重なったのを確認して、橘平は音を立てないよう布団から出た。上着を羽織って部屋を後にする。先程の視線の正体が気になっていた。
 暗い闇に溶けた森には誰も見つけられなかったが、纏わるような視線を、確かにあの時感じたのだ。友好的な視線ではなかったことも確信していた。しかし、それを声に出して皆に伝えたところで、また騒ぎになるのは面倒だった。

 先ほど窓の外に見ていた場所に辿り着いた。ホーホーの声が遠くに聞こえる。
(……逃げられたか)
 ポケットに手を突っ込んだまま一通り辺りを見回したが何も見つけられない。何だか気落ちしてしまった。
 こうしてわざわざ出てきた理由に、兄の存在が絡んでいないと言えば嘘である。勿論、兄が敵対しているなど信じたくもなかったし、友好的でない視線を橘平たちに向けるとも思いたくない。だが、橘平はどうしてもその真意が知りたかった。
 その場を後にしようと踵を返す。その時――
 背後から吹き付ける強烈な風。瞬発的に横飛びに転がる。頬を熱風が掠めて行った。
 後ろを振り返ると、ようやく闇に慣れてきた目に映り込む真っ黒なリザードンの影。そしてその背には、やはり真っ黒なコートを着た小柄な少年の姿があった。

 黒いコートを目にした途端、心が妙に不安に掻き毟られた。自然と呼吸が荒くなる。風呂場での出来事といい、なぜこうも嫌な記憶が引きずり出されるような出来事が続くのか。
 橘平は不安を飲み込みながら考えを巡らせた。そう言えば、アスクレを出る前に巡が話していたのも黒いコートの女性だった。この少年も儀式の邪魔を――?
(まさか)
 相手は子供である。橘平は幾分か落ち着きを取り戻して、容赦なく少年を睨みつけた。
「ガキが遊んでていい時間じゃねェぞ」
 少年は、その目元を隠していたフードをおもむろに脱ぐ。光の無い、曇った色の双眸が覗いた。
「子供扱いするな」
 少年の声に反応するかのように、リザードンが空に向かって咆えた。びりびりと震える空気。どうやら相手に話す気は無さそうだ。
 次の瞬間、リザードンは真っ直ぐに橘平を捉えた。大きく息を吸い込んだかと思うと、今度は真正面から、再びねっぷうを放った。
 迫りくる熱風。橘平の元に辿り着くよりも早く、眩しい輝きが闇を裂く。ボールから飛び出したらいでんは、即座に腕を交差させるようにして、橘平と自身をねっぷうから守った。
「ハン、やる気かよ。てめぇがやる気なら、ガキでも容赦しねェからな! 後悔すんじゃねェぞ!」
 それがたとえ子供であろうと、敵意を持って向かってくるものは徹底的に潰さなければならない。橘平は戦闘態勢に入った。

 少年は見た目の割には大人びていて、無口だ。一体何のためにここに来て、何のために攻撃を仕掛けてきたのか皆目見当がつかない。
(んなこと知ったことじゃねェけどな)
 橘平は絶えずらいでんに指示を飛ばしながら、心の中で呟いた。早々にケリをつけて、警察にだろうが何だろうが突き出してやる。そこで根掘り葉掘り聞いてやればいい。いくら大人びていると言っても、戦い方は子供そのものだ。勝負の行方は見えていた。
 リザードンはかえんほうしゃを撃ちながら、こちらへ接近してくる。次に来る技は大技。あの技で間違いない――
「ブラストバーン!」
「こらえろ! らいでん!」
 リザードンの上の少年は一瞬驚いたように目を丸くした。リザードンの放ったブラストバーンがらいでんに直撃する。巻き上がる炎。吹き飛ばされそうなほどの熱風が身を包む。
 間髪入れずに橘平は叫んだ。
「あまごいだ!」
 炎の中、グオオオッ! とらいでんの咆哮が轟くと、空から激しい雨が降り注ぎ始めた。リザードンはブラストバーンの反動で動けない。
 雨が炎を打ち消していく。辺りは一面、白い煙に覆われたが、黒いリザードンの影ははっきりと見えた。
「アクアテールでとどめをさせ!」
 水流を纏うらいでんの尾。バシャーン! という大きな音と共に、リザードンの身体はぐらりと倒れた。

 地面に転がった少年はコートにぶら下がった他のボールを慌てて手に取ろうとしたが、橘平が前に立ち塞がったのに気付き、顔を上げた。この状況でもなお、橘平のことを睨みつけている。見上げた根性だ。
「てめぇの負けだ。何でこんなことしたのか、聞かせてもらおうじゃねェか」
「お前に話すことなんか無い」
 少年は目線を外して、フン、と鼻を鳴らしてから続けた。
「ストーム団のみんなが来れば、お前なんか」
「は? ストーム団……? 何だそれ」
 聞き慣れない単語が一瞬引っかかったが、どうせ子供の戯言だろう――「いいから立てよ」と橘平が少年の腕を掴もうとした時、今度は凍えるような風が雨で濡れた頬を掠めて行った。
 熱かったり寒かったり、全く忙しい夜である。

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名前出てきてませんがはやとくん初登場させちゃいました!こんな感じでいいのかな…無口で無表情な感じだと思ったので…問題あったら直すので言っておくれ!
次はそーいちさん初登場に繋げられるように書いてみました。はやとくん迎えに来るそーいちさんって体かなと…
儀式組のみんなが合流してもきっぺが一人で全部見届けても、どちらでも自由にお使い下せえ!

[81] RE:リレー小説本編スレ9
Name:スラリン Date:2012/05/22(火) 01:35
誰か居る。

暗闇で慣れた目は、先ほど戦った少年とは違う大きな姿を捉えていた。
しかし全体的に黒っぽいのか、輪郭は分かるがその細部は分からない。
それに気を取られている橘平の隙をついて、少年は勢いよく駆け出すとその大きな影の隣へと着いた。まるで、親子のようだ。
その間にも冷たい風は吹き続ける。地面から、頭上の木々からは、ピシピシという聞きなれない音が響いていた。
「何なんだよ、お前たち」
聞こえているはずだ。しかし、大きな影と小さな影は答えない。
「らいで……!」
「橘平!!」
痺れを切らした橘平がらいでんに指示をしようとしたその時。橘平の声に答えたのは、大きな影でも小さな影でもなく、雑木の影から現れた、シマウマに乗った王子様だった。

司が言うのはこうだ。
要の寝息が聞こえてきて、自分もうつらうつらしていたところ、メイリオの入ったボールがカタカタと激しく揺れ始めた。
外に出てメイリオをボールから出すと、主人である自分でも収集のつかないほどの暴れっぷり。それでもなんとか時間をかけ宥めすかすと、突然森の方角から赤い光が見えた。
ただ事ではないと思いメイリオに乗り赤い光を目指していたらここに着いた、というのだ。赤い光というのはきっと先ほどのリザードンの大技だろう。
しかしこの森の中、赤い光が見えたのは一瞬だったはず。それを頼りにここまでこれたのか。それに、メイリオが突然暴れ出した理由。この2つの影を感知出来たというのか?
考え込んでいる暇は無い。司はメイリオから飛び降りる。
「メイリオ!」
蹄が地面を抉り、鬣がバチバチと激しく発光する。未だ興奮は冷め切らない模様。
青白い光が辺り一面の樹氷に乱反射して、周囲を薄明るく照らした。

鈍い若草色の瞳の銀髪の少年。
そして、少年とは対照的に、透き通るような薄氷色の瞳をした黒髪の青年の姿が光に浮かび上がる。
「お前たちは何なんだ。僕たちの敵なのか?」

雨は霰混じりに降り続いている。息を吐き出すと、この季節にはそぐわない、真っ白な吐息が零れた。
「平儀野 司」
そこで初めて青年が口を開く。司がびくりと反応した。
「どうして、僕の名前を」
だが、次の言葉は、メイリオの嘶きが重なり司は聞き取ることは出来なかった。
橘平は聞こえていていた。確かに、こう聞こえた。


「見つけた」


らいでんとメイリオ。そして黒いコートの少年は新しいボールからボーマンダ。青年が少し間を置いて取り出したボールからはハピナスが飛び出した(何となくイメージに沿わなかったので2人は内心驚いた)。
2対2。儀式の中では初めてのマルチバトルだった。

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あまりにも長かったので1つにまとめきれなかった…ごめんなさい\(^o^)/

[82] RE:リレー小説本編スレ9
Name:スラリン Date:2012/05/22(火) 01:39
「ドラゴンクロー!」
「らいでん!受け止めろ!!」
鋭い爪を、臆することなく受け止めるらいでん。そのままボーマンダを弾き飛ばす。
「メイリオ!かみなりだ!」
冷たい雨。分厚い雷雲が空から鋭い音を響かせた。あまごい中はかみなりは必中。―白いインカムの少女と戦った際、巡とピスケスのコンビともやったことだ。
「ハピナス、ひかりのかべ」
しかしその落雷は間一髪のところで半透明の壁に遮断される。命中はしたが、ボーマンダにとっては致命傷とはならなかったようだ。

橘平は冷静に敵のバトルスタイルを見定める。
黒髪の男の持っているハピナス。こごえるかぜで足止めをしてくるものの、それ以外は全く攻撃技を使っていない。バトルステージでどくどくを使う防御寄りのタイプのハピナスは見たことがあったが、ここまで補助に徹している型に出会ったのは初めてだった。
あの子供の持っているボーマンダをてだすけでサポートし、傷つくといやしのはどうで回復している。あの子供のバトルスタイルには粗があるが、それを補って埋めている。
バトルの技量はこちらが勝っているはずだ。それなのに、ボーマンダとハピナスの体力は一向に減らない。むしろこちらのほうがじわじわと体力を減らされている。
くそ、やりづれェ。
1対1のバトルで慣れている橘平にとって、2体の敵、そして、味方であるはずのメイリオの存在すらも少々鬱陶しく感じ始めていた。いかくでらいでんの攻撃力が下がっていたから、なおさらのこと。
「メイリオ!落ち着け!!」
落ち着いていないのはトレーナーも同じだ。見ず知らずの敵に名前が知られているのだ。この天気で荒れた息が黙認できる。
動揺するのも分かるが、それにしてもこいつ、個人情報だだ漏れじゃないか?

「ふぶき」
今まで補助技しか使わなかったハピナスの突然の大技。木々が激しく揺れ、地面が凍りつく。
2匹が足元に気を取られている間に、青年の方がメモを取り出し、何やら書き出したと思うとそれを少年に見せた。
少年の眉間にしわが寄ったがそれも一瞬。2人はボーマンダに飛び乗る。2人分の体重ももろともしないボーマンダの体はふわりと浮きあがった。
「!あいつら逃げる気だ!」
「逃がすか!メイリオ、ニトロチャージ!」
巻き起こった炎は足元の氷を溶かし、そのまま地上に残っているハピナスを狙う。
「タマゴばくだん」
いくつかの白い卵がメイリオの頭上を越えて飛んで行ったのと、メイリオのニトロチャージでハピナスが吹っ飛ばされるのは、ほぼ同時だった。

バキバキバキバキッ!!!

直後、耳を劈くような激しい音が橘平と司の背後から聞こえてきた。
完全に凍りつき脆くなった木はタマゴばくだんの衝撃で、そこから真っ二つに折れる。
「ッ!王子!!」
背後からの倒木に逃げそびれた司の体を抱きかかえ、間一髪安全な場所になだれ込んだ。
「ありがとう、橘平…」
「べ、別に感謝されるためにやったわけじゃねェよ!!!」
咄嗟の事で恥ずかしがる暇すらなかったが、我に返るとこの距離。密着感。顔に血液が一気に集まった。
すぐさま司から離れ、辺りの状況を確認する。倒れた木々。残されたらいでんとメイリオは、彼らが飛び去ったと思われる方角の空をじっと見つめていた。

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ひぃ、長くてすみませんでした!
次の日通る道が倒木で通行禁止になっているのを知って、あいつだ…!ってなるきぺつかが書きたかったんですが、そこまで入らなかったですね。
そーいちさんは木を倒した分、みどりすくすく募金に小銭を入れています

[83] RE:リレー小説本編スレ9
Name:鈴木ニコ Date:2012/05/22(火) 21:10
司は小さくくしゃみをした。髪も服も濡れている。とても見ていられなかったが、生憎橘平もTシャツ1枚だ。あまごいの後のふぶきは身体をひどく冷やした。
「つかささーん!!!」
戻って温泉に入り直そうと考えたところで、聞き覚えのある声と見覚えのある頭が飛び込んできた。
「かなめ…!」
「橘平くん!司ちゃん!大丈夫!?」
ユメトと巡も合流した。巡はひどく心配した顔で自分のコートを差し出してくる。そういうのはあっちにしてやれよ。振り向くと、司は要が借りてきたバスタオルとウインドブレーカーに包まれていた。俺も、あれでいいんだけど…

「ストーム団…?」
温泉とホットミルクでしっかりあたたまった頃。司は森での出来事を三人に伝えた。彼女が合流する前までは、橘平が話すことにした。
森で遭遇したふたりは、白いインカムではなく黒いコートを身に付けていた。おそらく組織のものだと思われる名前(団と言うからには、多くの人数が所属しているのだろう)も、和守たちが名乗っていたものとは違う。
「儀式の妨害を狙う、もうひとつの勢力…」
沈黙。これで何度目だろう。考え込んでもどうしようもないことは、いい加減わかっていた。今度こそ、本当にお開きになった(無断で部屋を飛び出した橘平と司は、ユメトにやんわりと注意された)。


結局全員うまく寝付けなかったようで、翌朝の出発は1時間延びた。すぐに暖を取ったのは正解だった。橘平も司もすこし鼻を啜っていたが、症状はひどくない。司が要にお礼を言っているのを見て、橘平は巡に礼をするべきかと考えた。いやいやいや…
「………あれっ?」
地図係が首を傾げた。五人の前には道がない。正確には、通れる道がなくなっている。自然では倒れそうにない立派な樹が3本、そこに横たわっていた。
「………昨日のやつだ…ッ!!!」
その根元に、わずかに溶け残った氷を見つけた橘平が叫ぶ。昨夜は晴れだった。雨も、吹雪も、あのふたりとのバトルで発生したものだ。くそっ!壁は、橘平の蹴りではびくりともしなかった。

ポケモンたちの力を合わせても不充分だった。無難にルートを変更することになる。エシュタウンへの到着が、また遠ざかった。
メイリオの上で司に抱きついている要はすこし嬉しそうだったが、抱きつかれている司は思案顔だ。コートの青年が、自分の名前を知っていたことが気がかりで仕方がなかった。今回は、あの従兄も関係していないだろう。していたら許さない。
(ストーム団と、)
(CCD…)
得体の知れない敵の存在に、司と橘平は頭が痛くなってきた。風邪のせいにしてしまいたかった。

「ユメトさん、」
ふたりの足取りが軽くないので、珍しくユメトと巡が前方を進むかたちになる。
「今夜の宿は、ポケモンセンターにしましょう。すこし遠回りになってしまいますが」
通り道にはキャンプ場もあった。野宿で我慢すれば、到着を1日早めることもできる。しかし、風邪気味の橘平たちにはあまり無理をさせたくなかった。
「うん。俺もそう思っていたところだよ。ありがとう」
出過ぎた真似かと心配したが、ユメトにお礼を言われてほっとする。今夜こそ、ふたりがゆっくり休めますように。


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ところで王子の透けブラ

[84] RE:リレー小説本編スレ9
Name:ミンズ Date:2012/05/23(水) 20:13
「ふわあ…」
メイリオの上で司に抱きついたまま、要は何度目かのあくびをした。要も昨夜眠れなかったのだろう。
「要、眠いのか?」
「うん…」
「うとうとして落ちないようにね」
「うん…」
橘平は立て続けにくしゃみをした。
「橘平くん、大丈夫?ちょっと顔が赤いね。熱があるのかな?」
ユメトが心配する。
「大丈夫ですか?あと少しでポケモンセンターですよ」
巡が地図を見ながら言う。一行はほっとして、心持ち足を速めた。

ポケモンセンターに着き、夕食を済ませる。
男女で別々に部屋は借りられたものの、風呂は各部屋にあるユニットバスのみ。昨日のポケモンセンターの風呂が大規模すぎただけで、ここが特別小規模というわけでは無いが。
司は要に先に風呂を譲ることにした。
「要、先に入っていいよ」
「司さん風邪ひいてるんだから、先に入って早く休まないと」
「僕は後でゆっくり入るよ。先に入るとどうしても早く出ないとって気になるからね。要は入るのが早いから、あまり待たなくていいし」
「それなら、先に入らせてもらうけど。私が眠そうにしてるから気遣ってくれた?ごめんね、ありがとう。急いで入ってくるね!」
「急がなくていいよ。ゆっくり入っておいで」
司は待っている間、テレビでも見ようと思った。ロビーにテレビが置いてあったはずだ。司はロビーに向かった。

「俺は風呂やめとく」
部屋に入るなり、橘平はそう言ってベッドに寝転がった。
「やっぱり熱があるの?大丈夫?風邪薬あるけど飲む?」
ユメトが気遣う。
「うっせえ。こんなもん、一晩寝りゃ治る。放っといてくれ。早く寝かせろ」
橘平は向こうを向いて布団を被った。
ユメトは尚も声をかけようか迷って、やめた。
「風呂に入ろうか。巡くん、先に入っていいよ」
「俺は後でいいです。ユメトさん先にどうぞ」
「じゃあ、じゃんけんで決めようか。勝った方が先だよ。じゃんけん、ぽん」
巡が負けて、ユメトは風呂に立っていった。
橘平と2人残される。巡は橘平の睡眠の邪魔になってはいけないと思い、部屋を出た。ロビーでテレビでも見ていよう。

「あ」
「あ」
部屋を出ると、丁度司も部屋から出てきたところだった。ばったり出くわした。
「どうしたんですか?」
「ロビーでテレビを見ようと思ってね」
「俺もです」
巡と司は、連れ立ってロビーに向かった。

++++++++++++++++++++++
めぐつか新密度アップのお膳立てだけ整えたので後よろしくお願いします。
ハルくんは、元々の性格に加えて、自分が弱ってるときほど人の優しさを上手に受け入れられなくなるんじゃないかと思ってこんな態度になりました。

[85] RE:リレー小説本編スレ9
Name:スラリン Date:2012/06/27(水) 22:17
ロビーに向かった2人だったが、既に先客がいたようだ。
ソファーに腰掛けたあの後ろ姿は、ポケモンセンターのジョーイのものだろう。彼女も休憩中なのだろうか。
話しかけようとした司が彼女を覗き込むと、目を丸くした。先に言葉を発したのはジョーイだった。
「あら。マイシン島の儀式の…」
「ジョーイさん。その子…」

ジョーイが大事そうに抱えていたそれは、ピンク色の体に尖った耳、くるんとした巻き毛の小さな命。星形のシルエット。
「ピィ、ですか?」
「そうよ。つい2日前に産まれたばかりなの。小さいでしょう?」
小さな手が、ジョーイの手の上のおもちゃを捉えようとじたじた動く。
「へえ。可愛いですね…」
「本当だな」
すぐ隣から声が聞こえてきて、振り返ると、今までで一番近い距離に司がいた。さらりと流れた黒髪からは良い香りがして、一瞬くらりとする。自分は何を意識しているのだろう。2人はジョーイの隣に腰掛けた。

「抱っこしてみても良いわよ」
「えっ」
突然の許可に、一番驚いたのは言われた当の本人である司だ。
「羨ましそうな目で見ていたから、ね?」
その言葉に薄っすらと頬を染めると、おずおずと星型に手を伸ばした。

ピィは司の指に戯れて、にこにこと笑っている。
「ふふ、大きく育つんだぞ」
小さな体を優しく揺り動かす様子はまるで母親のようで。金色の瞳は、自分に向けられるどんな表情よりも柔らかいものだった。こんな表情もするのだな――
「―巡?…こら、返事くらいしろ!!」
「はっ、はい!すみません!!」
「変な奴だな。ほら、お前も抱いてみなよ」
前に出された司の腕に、自分の手があたって、また意識がそっちに行ってしまって、
「めぐ、」
「司さん!!探したよっ!!!」
「うわっ!」
「!!?」
「きゃっ」
突然の少女の声と、体に伝わる衝撃。今度はジョーイも巻き込んで、なだれてるなだれてる。
「要!この子まで巻き込んだらどうするつもりだ!!」
「ごめんなさい…けれど、部屋にいなかったから心配になって」
巡と要の視線が一瞬合う。が、まるでそこに何もなかったかのように、要の視線は再び司に移った。

司はピィを巡に預ける。ピィは始めこそきょとんとしていたが、すぐににこにこと笑い、巡の腕に擦り寄った。
「そうだな。そろそろ僕もシャワーを浴びるか。お前も早く寝るんだぞ。おやすみ」
「お、おやすみなさい…」
颯爽と去る少女たちの後ろ姿を見ながら巡は自分もシャワーが控えていたことを思い出すが、すうすうと寝息をたてるピィを見て、小さくため息をついた。シャワーはいつになるのやら。

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おっ、遅くなりましたあ…
ミントドンのネタをほぼ全てお借りしてしまいました。めぐつか成立するの?不安…

[86] RE:リレー小説本編スレ9
Name:日夏ゆうり Date:2012/07/07(土) 21:59
このスレはここまでで!次にどうぞ〜!

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