[58] リレー小説本編スレ7 [ 返信 ]
Name:日夏ゆうり Date:2012/01/21(土) 02:38 
リレー小説本編を書き進めていくスレです。
文章の解釈に迷ったり今後の展開などで言いたいことがありましたら設定用掲示板のリレー小説議論スレへどうぞ。
設定用掲示板:http://www3.atpaint.jp/mysyn/index.htm

[59] RE:リレー小説本編スレ7
Name:日夏ゆうり Date:2012/01/26(木) 21:12
「おい、ユメト」
 要を探し始めてから数分後。橘平はふと思い立って、ユメトに話しかけた。あまりにも自然に自分から口を開いたことに少々違和感を感じたが、ユメトが普段より少し真剣な表情で返事をしたので、いつの間にか忘れてしまった。
「ん? どうしたの」
「あいつ、ククルタウンには行ってねェよ」
 儀式から抜け出したい気持ちは、橘平も同じだった。ひとつ神器を回収したところで、この儀式に対する嫌悪感は変わらない。もっとも今は、兄――和守が何故自分達の前に姿を現したのかを知るまで帰るつもりは無かったが。
 そこでもし、自分が逃亡を図るなら、と考えた。あいつ――要だって馬鹿ではない。これくらいのことは容易に考えつく筈だ。
「考えてもみろよ、探しに来られるって分かってて、のこのことククルに向かうか? 捕まって連れ戻されるのがオチだ。それなら、この周りの見つかりづれェ場所で、適当に時間を潰してからククルに戻るか、別の町に向かうかした方が賢いに決まってんだろ」
 俺だったらもっと上手くやるけどな――橘平は心の中で付け加える。
 ユメトは少し考える仕草をしてから頷いた。
「確かに橘平くんの言う通りだ。でも念のため、司ちゃんにはククルを見ておいてもらおうか」
 メイリオに跨がった『王子様』をぼんやりと思い出してから、橘平は続ける。
「別の町に向かったかどうかは観光協会に行きゃ分かる。『そらをとぶ』を覚えたポケモンを借りに行くだろうからな」
「それは巡くんに任せれば大丈夫だね。問題はその『見つかりづらい場所』をどうやって探すかなんだけど……」
 これには心当たりがあった。というか無ければこんな考えは口にしていない。
「らいでんに任せてくんねェか」
 ニドキングは元々、群れで生活するポケモンである。彼らの耳は非常に優れており、仲間一体一体が持つ固有の音を聞き分けることによって、その居場所や様子を知ると言う。
 儀式が始まってから4日目。それだけあればらいでんは十分に要の『音』を覚えていると、橘平は確信していた。
 軽く説明すると、ユメトはいたく感動していた。
「橘平くん凄いなあ……俺にはそんなこと思いつかなかったよ」
 ユメトの言葉は何だかくすぐったかったが、橘平は構わずに、少し開けた場所で、らいでんをボールから出した。
 らいでんは尻尾をブンブンと振りながら、橘平に向かってくる。何がしたいかは大体予想がついたので、それを手で制してから、橘平はらいでんに指示を出した。
「あの女――要の『音』、分かるな。あいつを探してくれ」
 状況を察したのか、らいでんは尻尾を振るのをやめ、こくりと頷くと、じっとして、耳だけを左右に動かした。しばらくして、ガウ、と一声上げると、昨日儀式を行った森の方に向かって歩き始めた。
「やっぱり凄いねえ、橘平くん」
「う……うっせェな! どうでもいいから王子とあのヘタレにとっとと連絡しろよ!」
 ユメトの賞賛に――正確に言えばその賞賛を嬉しく思う自分に耐え切れなくなって、ついつい橘平は大声を上げた。
 こんなめんどくせェことしやがって。心で呟いたが、あの時の喧嘩の罪滅ぼしを望んでいる自分がいるのも分かっていた。

-----------------------------------------------

ニドキングのくだりは耳が良いってこと以外は結構妄想入ってます。
何かみんなに対する印象がところどころひどくて申し訳ない…そして度々発動するユメトさん効果。

[60] RE:リレー小説本編スレ7
Name:スラリン Date:2012/02/07(火) 23:00
「そうですか…ありがとうございました」

ククルタウンについて真っ先に司が向かったのは、数日前に自分たちが利用した船乗り場。
乗り口で乗員のチケットを確認していた2人の職員を見つけると、開口一番叫んだ。
「ポリゴン2を抱いた女の子を見ませんでしたか!?お願いします、教えてください!!」
必死に頭を下げ続けるその様子にただ事ではないと感じた職員が、受付嬢のもとに司を連れて行く。
(2人が狼狽えている間にも司はますますヒートアップしていき、最終的には土下座しかねない勢いになっていた)
受付嬢が上司であろう職員と相談し、待合室で交渉した結果、最終的に職員が船の乗客リストをこっそり彼女に見せてくれた。融通がきいてくれてよかった。
マイシン島はそれほど大きい島でもないので、船の乗客も少ない。昨日の夜から今日の昼にかけてのジョウト行きの船のリストを隅々まで見た司だったが、そこに要の名前は見つからない。
職員たちに再び頭を下げてお礼の言葉を言うと、次は港にいた人たちに聞き込みを始めた。
黒くて短い髪の、自分より10cmほど低い女の子。もしかしたらポリゴン2を抱いていたかもしれないという情報を添えて。
しかし聞く人聞く人、その口から有力な情報を得ることはできなかった。

「…はぁ」
ククルに到着してからノンストップでここまで来たが、やはり疲れが溜まってきた。ベンチに座り、ため息をつく。
ふとCギアを覗くと、そこには「着信あり」の文字。
友人や従兄ならともかく、両親にまで『寂しくなると思うから、出来る限り電話はしないでほしい』と、念を押して言っていたのだ。
となると、見なくても着信の相手はしぼられてくる。着信履歴を調べると、そこにはユメトの名前。しまった。相当前に連絡が来ている。
慌てて折り返しユメトに電話をかけると、2コール目に彼の声が届いた。

「もしもし、司ちゃん?」
「悪い、ユメト。気づかなくて…」
「ううん、大丈夫。俺たちも今森に入るところだったから」
「森?」
そこでユメトは、要はククルタウンには行っていないと橘平が切り出したこと、さらにらいでんの聴覚により要を探していたこと、そして、それを辿ると昨日儀式を行った森に着いたということを司に告げた。
なるほど、森の奥はきっと電波も悪い。要のCギアが今でも圏外なことにも納得だ。
「今森の入り口に着いたから、もう一度司ちゃんに連絡しようと思ってたんだ。あ、巡くんにはもう連絡したからね」
「そうか、ありがとう。僕もすぐにそっちに向かうから」
一応、ククルには要はいなかったこと、乗船した乗客リストの中に要はいなかったことをユメトに伝える。
「やっぱりそうだったんだね、助かったよ。ありがとう司ちゃん」
彼の『ありがとう』がすごく嬉しい。その言葉、その声にじわりと心があたたかくなった。
しかしいつまでも感慨にふけっている場合ではない。話を終わらせ電話を切ると、再びメイリオにまたがる。
『森にいる』。司にすると、そこは完全に盲点の場所だった。
要はまっすぐに船でチトリに帰るとばかり思っていたし、そうでなくても次の街へ移動していると思っていたのだ。
自分の発想の狭さを責めたがそれ以上に、橘平に感心し、感謝した。
(けれど、森、か…)
嫌な予感がする。今からとばせば、ユメトたちにさほど遅れをとることもなく森に入ることができるだろう。
メイリオが、行きの道よりもさらに速く、大地を蹴った。

------------------------------------

なんか、私の書く王子はいつもテンパってる気がする。そしていつもユメトお兄さんに癒されてる。かなめたん…待っててね…ぐぬぬ

[61] RE:リレー小説本編スレ7
Name:日夏ゆうり Date:2012/02/14(火) 23:27
 司がメイリオを駆ってアスクレタウンまで戻ると、ユメトと橘平が森の手前で待っていた。Cギアが圏外になることも踏まえて、合流してから入った方が良いと考えたとのことだった。しかし、そこには巡の姿は無かった。
「巡は」
「うん、さっきから連絡取ろうと電話をかけているんだけど。なかなか出てくれなくて」
「何やってんだよ、あいつ」
 橘平は待たされた上に、上手く連絡がつかないことに苛立っているようだった。らいでんが幾度となく抱き付こうとしているが、その都度それをかわしながら、目で咎めている。
「仕方ないよ。巡くんもきっと頑張ってくれてる。巡くんにはメール、残しておこうか」
 ユメトがCギアで手短にメールを打つ。それが送信されたのを確認すると、軽く頷いてから二人の顔を見渡した。
「うん、行こうか」

◆ ◆ ◆

 らいでんは時に立ち止まり、耳を左右に動かしながら、慎重に方向を選んでいた。時々橘平がその背に触れながら、「大丈夫か」「分かるか」などと声を掛けている。
 司とユメトは、大きな物音を立てないよう努めながら、後ろを歩いていた。初めのうちは日光が十分に差し込んでいたが、その光はあっという間に木々に遮られ、今や随分と暗い。司がふとCギアに目をやると、みるみる電波状況を表すアンテナマークが消えて行き、ついには圏外となった。
 儀式を行った神社からはもう随分と離れているだろう。いくら何でもこんな深い場所まで来て、隠れる必要があるだろうか。
(本当にこの先に要がいるのか……?)
 司は内心少し疑ったが、今はらいでんを信じるしかない。

 数分ほど歩いた先だった。
「らいでん、ちょっと待ってくれ」
 橘平が険しい顔で、らいでんに制止の声をかけた。その声の理由を、司とユメトもすぐに理解する。
 一部の地面が不自然に湿っている。昨夜は良く晴れていたし、この場所にだけ雨が降ったとは考えづらい。そうなると、考えられる可能性は自然と絞られてきた。
「これ、ポケモンの技だろ」
 橘平が表情を崩さず、静かに言い放つ。
「要、まさか」
 要が宿を抜け出したのは、司が起床した時間踏まえると、夜中から明け方にかけてである。夜行性のポケモンが多く生息していそうなこの森で、考えたくは無かったが、要が野生のポケモンに襲撃されて――という最悪のパターンが頭を過ぎった。司の胸にますます焦りが広がる。
 その焦りに歯止めをかけるように、ユメトが落ち着いた調子で声をかけた。
「要ちゃんならきっと大丈夫。でも少し急ごうか」

 深い森を更に進む。らいでんの動きが大分速くなってきた。要に近づいているらしい。
 それと同時に、再び日の光が差し込んできた。木々が掃け、景色が開ける。

 その先には、崖が広がっていた。

 らいでんがその場で立ち止まった。橘平が半歩下がる。崖下に広がる樹海を前にして、司は完全に血の気が引いた。
「要……」

「ん、ちょっと待って」
 すると何かに気付いたように、ユメトが慎重に崖底を覗き込んだ。すぐに「あっ」と声を上げてしゃがみこむ。
「要ちゃん!」

 3メートルほど下に、要の姿はあった。腕と脚を折り曲げて、横たわっている。
「要!!」
 司は、そのまま落ちてしまうのではないかというくらいの勢いで駆け寄った。やっと見つけた。しかし、もしかして――最悪のパターンが再び脳裏を過ぎる。
 すると、要はその声に反応したのか、うっすらと目を開けて、上を見上げた。目と目が合う。
「あれ……何で……」
 要は一瞬状況が呑み込めないようだったが、すぐに皆の顔を認識すると、起き上がった。
「何で……みんな……」
 要の目には溢れんばかりの涙が浮かんでいた。

-----------------------------------------------

かなめたん見つけたよ!!!

地面が湿ってたのはふぶきの跡です。一晩で溶けてしまった銀世界。

[62] RE:リレー小説本編スレ7
Name:鈴木ニコ Date:2012/02/16(木) 22:35
フルスピードで観光協会のビルに到着した(メイリオともほぼ同着だった)巡は、呼吸を整えながらその扉を叩いた。心臓を吐き出しそうだ。受付の女性は彼の様子に驚いていたが、事情を説明すると親切に対応してくれた。
しかし、要の行方を知ることはできなかった。

協力してくれたスタッフに礼を伝え、司やユメトたちと連絡を取るために外へ出た。通りは雑踏していたが、屋内は電波の入りが悪かったので仕方がない。歩きながらCギアを通話画面に切り替える。
通話開始ボタンを押そうとしたところで、巡ははたと動きを止めた。騒音の中から、聞き逃すことにできない単語をひろったのだ。ぎしき。じんぎ。ついでにメタグロスとじしんも聞き取れた。心当たりがありすぎる。
声が聞こえた方を振り返ると、黒いコートが路地へ入って行くところだった。通話画面を表示したまま、Cギアの電源をオフにした。

詰まれたごみ袋の陰に隠れる。うわ、生ごみだこれ。コートの人物は女性のようだった。どこかで聞いたことのある声だったが、思い出せない。
「アスクレの神器は回収されちゃったみたい」
「昨夜、森にいろいろ仕掛けておいたけど、ちょっと遅かったね。メタグロスの坊やに邪魔されちゃったから」
「それが、もう宿を出ちゃったみたいなのよ…うん。一旦戻るわ。報告よろしくね」
明らかに儀式の関係者だ。しかも、察するところあまりよろしくない関係のようだ。ついでに、メタグロスの坊や(たしか神崎 千鶴と言ったか。苦手なタイプだった)ともよろしくない関係らしい。
女性が通話を終えたのを見計らって、巡はこっそりと路地を抜けた。

(この儀式の裏側で、複数の組織が動いている…?)
コートの女性にも仲間が居るようだったし、神崎 千鶴の相棒は既に登場済みだ。これからも続々と出てきそうな雰囲気である。おいおい。キャラクター増えすぎじゃないですか?
いや、それよりも、今はメインキャラクターの心配だ。
Cギアの電源をオンにすると、複数の不在着信(ほとんどがユメトと司、なんと橘平からも1回だけコールがあった)とメールの受信メッセージが表示された。しまった。なにか進展があったらしい。とりあえずユメトからのメールを開いた。

『らいでんの聴覚で、要ちゃんを捜索中。昨日儀式を行った森へ入ります。司ちゃんとも合流予定。電波が届かなくなる可能性あり。道しるべに小石を置いておきます』

儀式を行った森。森、という単語を目にしたとき、先ほど聞いたばかりのセリフを思い出した。
―― 昨夜、森にいろいろ仕掛けておいたけれど、
「………………………森!!!!!」
フルを超えるスピードで、今度は森へ向かって駆け出した。明日があるならば、筋肉痛で済むレベルじゃないぞ。



「要!すぐに助ける!がんばってくれ!!!」
崖下の要を引き上げるために、司はメイリオに装着していた手綱を利用することにした。それだけでは長さが足りないため、自らも身を乗り出して距離を稼いだ。彼女を支えるのは、ユメトと橘平、そしてらいでんだ。要も不安定な足場で懸命に手を伸ばす。
「……………とどいた!」
「よし!ユメト、橘平、らいでん、たのむ!」
要が手綱を掴んだ。司の号令で、男子たちが彼女ごと引き上げを開始する。

らいでんのパワーはすごかった。正直、ここには不在の巡よりもよっぽど役に立った。そのパワーには、腕力だけではなく聴力のことも含まれている。それは先ほど実証したばかりだが、このときにも発揮された。
背後に迫るグラエナの唸り声に、いち早く気付いたのだ。
「がうっ!!!」
「らいでんっ!!!!?」
橘平も振り返るが、応戦体勢に入ったらいでんが持ち場を離れたことで、身体と意識を崖下に持って行かれる。
らいでんが慌てて戻ろうとした隙を狙って、グラエナが飛びかかる!


「ぎゃうんっ!!?」


崖上から聞こえた悲鳴は、らいでんのそれにも似ていたが違った。
倒れたのはグラエナだ。その上で、どうやら後方から跳んできたらしい黒い物体が暴れている。びちびち。
――ピスケス。

崖下に引きずられはじめた司の手が、手綱ごと握られた。
「…………巡ッ!!?」
「おそくなって…ッ、すみませんんん!!!」
遅れて登場しても良いのは、少年漫画のヒーローだけである。


--------------------------------------------------
な が い !!!!! \(^o^)/
師匠パートを無視して、ふぁいといっぱつシーンを書こうと思っていたのですが、ゆうさんがアイちゃんと接触させていいよと言ってくれたので!グラエナが攻撃的になっていたのは、ストーム団のせいかも。そしてかなめたん、おかえりなさい…!

[63] RE:リレー小説本編スレ7
Name:ミンズ Date:2012/02/19(日) 10:27
要を崖上に引き上げると、一同はその場にへたりこんだ。
要は助かったことが実感できない様子で呆然と座り込んでいる。
「良かった…要……」
司がつぶやくと、要の目に再び涙が溢れた。
立ち上がろうとしてよろめいて、一度膝をついてからもう一度立ち上がって、司にしがみついてわっと泣き出す。
「こわかった…、こわかった……!」
わああと要の泣き声が響く。
「たすかった…んだね、私、助かったんだね……」
要はそう言って、ただ声を上げて泣いた。
巡はその様子を見ながら、遅れたお詫びをいつ切り出そうかと考えて、やっと思い出してピスケスをボールに戻した。
橘平はぶすっとした顔で要を見やった後、らいでんと一緒にまだ他にグラエナがいないか周囲の警戒にあたっていた。
ユメトは穏やかな表情で見守り、要が落ち着いてきたのを見計らって声をかけた。
「要ちゃんが助かって本当に良かったよ。みんな心配したんだよ」
要ははっとした顔をした。
「う…あ、あ、ありがとう。助けてくれて、ありがとう」
そして、気まずい表情になる。
「その…逃げ出してごめんなさい」
ユメトがにこにこと答える。
「うん、いいよ。居なくなった理由とか、ちゃんと皆に話そうね。あと、そろそろ司ちゃんから離れてあげて?」
「えっ?」
要がわけがわからず司の顔を見ると、司は赤い顔をしていた。
要は司の顔を見て、司の首に回した自分の腕を見て、もう一度司の顔を見て、合点がいった顔をした。
「もしかして、首とか肩とかそのへん弱い?」
司の顔がますます赤くなる。司は顔を逸らした。
「ふうん…触られると、感じちゃうんだ」
わざといやらしく言って司の反応を確認して、要は自分の推測が正しかったことを確信した。
「かわいい……こんなかわいい子がすぐ傍に居たなんてね。気付かなかったなんて、私、どうかしてたよ」
ニヤア…と嫌な笑みを浮かべる要。既に先ほどまでの泣き顔は完全にどこかへ行っている。
司は顔を赤く染めたまま身震いした。
要がさらに何か言いかけたところで、それに被さるようについに意を決した巡が発言した。
「あ、あの、遅くなってすみませんでした!」
間が悪いというか何というか。要は出鼻をくじかれて、嫌そうな顔で巡を見た。
司はその声で我に帰り、大海の木片とばかりにその発言に食いついた。
「全くだ!一体何をしていたんだ?」
つかつかと巡に詰め寄る。まだ少し顔が赤かった。
「え、いえ、その、」
司の勢いに巡がたじろぐ。
「まあまあ、」
ユメトがなだめる。
「こんなところにいたらいつ野生ポケモンに襲われるかわからないし、一旦ポケモンセンターに戻ってからゆっくり話そうよ」
自分が恥ずかしさ隠しに巡に詰め寄ろうとしていたことに気付いた司は、こほんと1つ咳払いしてから同意した。
「そ、そうだな。その通りだ。行こう」
先に立ってずんずん歩き出す。
「待てよ!1人で先に行ってんじゃねえよ」
その後を橘平が追い、ユメトも巡と要を促して歩き出した。

そのまま放置されたグラエナは、うおんとひとつ情けない声を上げた。
+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
かなめのやつを助けてくださってありがとうございます!みんなやさしい!
王子につながった手綱を握るかなめとかもう…助けられるシーンまでえろいんだから///

[64] RE:リレー小説本編スレ7
Name:如月ユイナ Date:2012/02/20(月) 16:56
ポケモンセンターに戻った一行は、その施設の一部のレストランスペースに行くことにした。そういえば、今日はまだ朝食を摂っていなかった。
昼食にしても遅い食事を摂りながら、ユメトは皆の顔を見渡す。要は司のお陰でだいぶ元気になったようだった。それよりも司の方が動揺しているかもしれない。まだどこか肩に力の入っている司の様子に、ユメトはこっそり微笑んだ。平和だ。

「司さん、このジュース美味しいよ!一口どう?」
「え、あ、ああ…ありがとう」
「ふふ、間接キスだね」
「!?」
女性陣が仲良く食事をしているのは微笑ましいしかわいいのだが、それに対して自分を除く男性陣が、黙々と食事をかき込んでいて気まずそうなので、ユメトはちょっと悩んでから話題を出すことにした。
といっても、折角落ち着いた要に早速脱走の理由を聞くのもどうかと思ったので、もうひとつ気になったことを訊くことにする。
要にはいなくなった理由を皆に話すように声をかけはしたが、今は最悪、要が話せる一人に話してもらえればいいと思っていた。もちろん全員に話してもらえれば、その原因をみんなで無くせるように努力はするつもりではあったが、大々的には話しにくい話もあるだろう。要が全員に話してもいいと思ってくれるまでは、待つつもりでいた。

そこまで考えたユメトは紅茶の入ったカップを置いて、微笑みながら小首を傾げる。それから、いつもの穏やかな声で切り出した。
「ねえ、巡くん」
「あ、はい。なんですか?」
「森に来るのが遅くなったの、何かあったんだよね?よかったら聞かせてくれないかな」
それを聞いた巡の顔が少し強張る。どうやら、あまりいい話ではなさそうだった。



++++++


アスクレの神器は回収された、森に色々仕掛けておいた、メタグロスの坊やに邪魔された。

巡が路地で聞いたという女性の声は、案の定こちらにとってよろしくなさそうな内容だった。それも、予想以上に。
「メタグロスの……神崎千鶴…」
巡の話が始まってから真剣にそれを聞いていた橘平が、呟くように言う。それに対して、司が肯定した。
「そうだろうな。彼が僕たちの妨害をしているのはもう疑いようがないけど、その彼に妨害されたとなると、その女性は僕たちのような立場なのか、それとも…」
「…俺が聞いた限りだと、その女性も俺たちの儀式を妨害したいようでした。この儀式の裏で、複数の意志が働いているような…」

突然出てきた自分たちの考えてもいなかった話に、皆が考え込みながら口を閉じる。要も口には出さなかったが、先程司と楽しそうに話していた時とは違い、顔色が悪いようにも見えた。
しばらくそうして各々で考えていたが、突然ユメトがぱん、と軽く手を叩いた。そして、いつもの微笑みを浮かべながら言う。
「はい、終わり!これだけだとまだ情報が足りないみたいだね。でも、何も知らないよりはずっといいよ。今のところは注意しながら儀式を続けることしかできないけど、心構えがあるのとないのでは違うからね。巡くん、ありがとう。」
「あ!い、いえ…」

急にお礼を言われて驚いたのか、巡がおどおどと返事をする。それを見た司が言った。
「なんだ巡、お礼を言われたんだから胸を張っていいのに。」
「いえ、そんな…俺は偶然聞いただけなので、そんな…」
「…謙虚というかなんというか、もう少し自分に自信を持ったらどうだ?」
「い、いや、えっと…」
「司ちゃんの言う通りだよ、巡くん。でも、もし次があったら一人で危ないことをするのはやめてね。今回だって見つかってたらどうなったか分からないし。」
司の言葉にたじたじになった巡を見かねたユメトが、助け舟のつもりで声をかけたが、それは逆効果になることになった。
「あ、それは大丈夫、です…ごみ袋の影に隠れてたので…」
「ごみ袋…?」
司が一瞬怪訝そうな顔をして、それから合点が言ったように、ああ、と呟く。
「通りで少し生臭いと…」

完全に凹んでしまって項垂れる巡に、ユメトは心の中で謝りながら精一杯のエールを送ったのだった。

++++++++
師匠がんばって!!!

[65] RE:リレー小説本編スレ7
Name:スラリン Date:2012/02/21(火) 20:33
食事の後、5人は再び部屋に戻り荷物をまとめた。かなめ捜索のために、前日に買っていた日用品や食料などを部屋に置いていったままだったのだ。
女子部屋では昨日とは打って変わったかのように明るくなった要と、要が打ち解けてくれたことに喜び半分、戸惑い半分の司。
男子部屋では黙々と食料を詰めなおす橘平、黙々と据え置きの消臭剤をコートにふきつける巡(さっきの言葉がよほどショックだったらしい)、それに苦笑いしながらもいつも通りに支度を済ますユメトの姿があった。

「よし、みんなそろったことだしそろそろ出発しよっか。エシュまでは遠いから、みんな頑張ろうね」
支度が済み次第フロントに集合。昨日と同じだったが、全員揃っていると士気も、気勢も、全然違った。ユメトの言葉に4人が頷く。
「要は傷が癒えるまで、しばらく僕と一緒にメイリオで移動しよう。いいかな?」
「こっちこそいいの!?ありがとう司さん大好き!!」
ぎゅむっと司に抱きつく要の姿を、橘平は何とも言えないような顔で見ていた。
一昨日強く言いすぎてしまったことを謝罪するタイミングを探していたが、今がそのタイミングで無いことは分かっていた(数時間前の巡の間の悪さの二の舞にはなりたくなかった)。

「そういえば、巡」
「はいっ」
不意に呼びかけられて、巡は思わずびくりと肩を震わせた。
ちょっとごめんね、と言って抱きついていた要をその場に残し、巡に歩み寄る。1人になった要は不満げな顔で巡を見つめている。
要が1人になったタイミングを見計らい、橘平が彼女に声をかけようと、した。
「さっきはあんなことを言って悪かったな。いきなりあんなことを言うなんて、僕が不躾だった」
「え、いや…俺も悪かったですから…それに、もう消臭しましたし」
…まさかそっちが先に謝るとは。橘平は再び口を紡ぐ。
消臭、という言葉に反応したのか、司はさらに巡に近づくと、左肩あたりに顔を寄せた。
え?近すぎませんか?要と橘平が一瞬凍りつく。巡はさらに凍りつく(ユメトも一瞬目を丸くしたが、すぐに通常モードになった)。
当の本人の司はすぐに顔を離し、飽きれたような顔で巡を見つめる。
「つけすぎ。限度というのを知らないのか?」
「す、すいません」
無香料につけすぎもなにもあるのかと言い出せずに巡が黙っていると、司がポシェットをごそごそとあたりだした。
取り出したのは白いハンカチと淡い紫のアトマイザー。数回ハンカチに吹き付けると、シトラスの香りが鼻孔をくすぐった。
「じっとしてろ」
ハンカチを自分の手の甲で軽く叩くと、そのまま巡の首、肩、腰、手首をぽんぽんと叩いて行く。
「香水には好みがあるからあまり他人のをつけるのもどうかとは思ったのだけれど…」
「いえ…いい香りだと思います…」
その光景は、飼い主に無理やり服を着せられている最中の犬のようにも見え、発表会の前に母親に身支度を整えてもらう子供のようにも見えた。
この2人に待ったをかけたのが、放って置かれた少女だ。2人の間にずいと割り込む。
「司さん!私にもやって!」
「ああ、いいよ。このハンカチの裏でいいかな」
「もちろん!」
司がハンカチを折り返して再び同じことを要にしている間、いきなり放置プレイ状態になった巡は、とりあえず自分の手首に鼻を近づけてみた。いい香りだ。


「シトラスの香水は少量でも匂いが濃いからあまり使わなかったんだけれど、この香水は良い香りだね」
「ありがとう。幼馴染からのプレゼントなんだ。 いつも思っていたけれど、ユメトもいい香りがするよ。何というか、安心する香りというか…」
「ふふ、男の子もちゃんと香りに気を使わないとね。」
エシュタウンに向けて歩き出す。要は司と一緒にメイリオに乗っている。密着率がすごい。
黒いコートの女性、メタグロス使いの神崎 千鶴、そして、橘平の兄、戦部 和守。
彼らの存在は儀式が一筋縄では行かないということを表していた。しかし、ここで立ち止まるわけにはいかない。
「橘平くん」
何だよ。常に不機嫌そうに聞こえる彼の声も、この数日で聞き分けできるようになってきた。今は何ら不機嫌でもなんでもないらしい。
「要ちゃんにはあとからゆっくり話してもらうから、謝るのはその後でも大丈夫じゃないかな」
「…分かってる」
「それとさ、俺の使ってるコロン、後から使ってみる?」
「アホかッ!!」
これは、照れ隠しの声。ふふ、可愛いなあ。

------------------------------------------

なっがい!割には出発しただけだという\(^o^)/進まない…
かなつか+めぐつか+ゆめきぺになりましたね。ユメトお兄さんが何を使っているかはわからなかったけれど、コロンって響き可愛いですよね(ほぼそれだけで決めつけた

[66] RE:リレー小説本編スレ7
Name:鈴木ニコ Date:2012/02/21(火) 22:05
このスレはここでおしまいです。
ここから先は次スレへどうぞ 三(`・ω・´)バビュン

もどる